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同時給排気型レンジフード その1


「家具から始める家づくり」リーフの猪倉です。
前回もこのブログでご紹介した松尾和也さんの「ホントは安いエコハウス」

ずっと読み進めていたのですが、その中でレンジフードの章
「P135 勘違い17 レンジフードで月4000円の損失」
があったのが目に留まりました。
キッチンを良く取り扱う当社では大切な問題なので改めて深く掘り下げてみることにしました。

高気密住宅でのレンジフードの問題点

高性能な住宅の代名詞ともいえる「高気密高断熱」
住宅の気密化を図ることで断熱効果も正しく発揮でき、吹き抜けやリビング階段を作っても冬場冷たい空気が2階から降りてくる現象(コールドドラフト)を避けることができます。
そのような住宅でレンジフードを運転したときに発生する問題点が2つ。
1.冷たい外気が室内に流れ込む
冬場の場合、せっかく高気密高断熱の性能を発揮して一定の室温にあるところに、レンジフードを運転することにより負圧が発生します。そうすると24時間換気用の吸気口から外部の冷たい空気が入ってきます。
キッチン近くの吸気口はリビングあたりに設置されていることが多く、リビングからキッチンのレンジフードにむけて冷たい空気が流れ込むことになってしまいます。
せっかく温めた空気(夏場なら冷房によって冷やされた空気)が外に排出してしまい、熱損失が発生してしまいます。
2.室内が負圧になり、玄関ドアなどが開きにくくなる
高気密住宅では普通でも気密性能が良いあまりに玄関ドアの開閉が重いといった現象が見られますが、レンジフードを運転して負圧が強まると、さらにこれが重くなり、子供さんだとかなり苦労することになります。
このような症状を改善させる方法の一つとして
「同時吸排型のレンジフード」
の使用が挙げられます。

同時吸排型レンジフードとは

通常のレンジフードは本体から排気ダクト(直径15センチ)が伸び、外壁を貫通して屋外に汚れた空気を排出します。
同時吸排型レンジフードは排気ダクトに加え、吸気ダクトの接続口ももち、吸気と排気を同時に行えるタイプのレンジフードです。

同時吸排気型レンジフード本体を裏から見たところ

同時吸排型レンジフード本体を裏から見たところ

本体、真ん中上部に見えるのが排気口。
左側方についているのが吸気ユニットです。
外部から吸気ユニットに接続され、外気はレンジフードの運転時に開閉式のふたが開き、生じた負圧の力によって外気が吸気ユニットからレンジフード側に入ってきます。

同時吸排気型レンジフード

入ってきた外気は前幕板上部にあるスリットから室内側に流れてきます。
元々、レンジフードを運転するということは、コンロなどから熱量が発生するわけで、コンロ近くから多少冷たい空気が入ってきてもさほどの熱損失は生じませんし、リビングを冷たい外気が通ることもないわけです。

とココまで、松尾さんの本の内容を少し詳しく書いてみました。
それでは具体的に同時吸排型レンジフードを選ぶ時にはどんな事に注意をすればよいのでしょうか。
一般的な(同時吸排でない)レンジフードの選び方も併せてご紹介したいと思います。

同時吸排レンジフードはショートサーキットに注意する

一般的にはキッチンのコンロ側をできるだけ外壁側にレイアウトし、レンジフードから外部までのダクトの長さをできるだけ短くすると思います。
同時吸排でこのようのレイアウトを行うと、外壁を貫通する吸気口と排気口の距離が近くなり、排気された汚れた空気が再び外部吸気口を通って室内に流れ込む、いわゆるショートサーキットという現象が起きてしまいます。
これを緩和するためには同時吸排用のウェザーカバーを使用します。
同時吸排気型レンジフードとは
このウエザーカバーは吸排気がそれぞれ逆の向きに排出できるようにスリットが開けられています。
ただし、強い風が吹いた時など、風向きによっては排気が再び吸気される可能性も残ってます。
出来れば、外部の吸気口と排気口はできるだけ離しておく方がいいのです。
しかし、その場合でも次のような点に注意が必要となります。

同時吸排レンジフードはダクトの長さに注意する

同時吸排型の場合、吸気ダクトと排気ダクトの2本を外壁を貫通して外部に出す必要があります。
コスト的にも、また吸排気の効率的にもダクトはできるだけ短いほうが良いのです。
排気ダクトが長くなりすぎるとダクトとの摩擦やカーブの抵抗によって有効な排気量が少なくなってしまいます。
また、吸気ダクトが長くなると、ダクト内の空気温度(外気温)と室温が接触することで、夏場はダクトの内側に、冬場はダクトの外側に結露が生じてしまいます。これを防ぐためには写真の様に吸気ダクトを断熱材で覆ってあげる必要があります。

同時吸排気型の施工例

http://ponponniki.blog.jp/archives/1043245822.html

現実的にはキッチンのコンロ側をできるだけ外壁際にレイアウトして、排気経路をできるだけ短くし、吸気経路が長くなる場合は断熱材で結露対策をとる必要があります。

運転中の騒音レベルにも注意を払う

これは、同時吸排でない一般的なレンジフードでもいえることですが、レンジフードが運転中に発する騒音は機種によってかなりの差があります。

弱運転時の騒音が20dB

弱運転時の騒音が35dB

上記の2機種、上の方は「弱」での騒音が20dBなのに対し、下の機種は35dBと、1.5倍もの開きがあります。
ちなみに、/で2通りの数値が書かれているのは電気の周波数の違いで、左側が東日本の50Hz、右側が西日本の60Hz時の騒音です。
一般的に、高額な上位機種ほど、弱の時の騒音が低めに抑えられているようです。
24時間換気機能のついているレンジフードもあり、そのモードだと、さらに騒音は小さくなります。
今までの施工経験ですと、マンションでのリノベーション時にレンジフードを取り換えた際、マンションの場合は外壁までのダクトが長いので、音の大きな機種だと共鳴してさらに大きく感じる事がありがちです。
戸建てでも、オープンキッチンで、奥様がコンロで調理しながらリビングにいるご主人や子供さんと会話をするときに大きめの音だと聞き取りずらいことがあります。
最近はメンテナンスフリーのレンジフードなど人気があるようですが、音も住環境には大切な要素。
選ばれるときにスペックの騒音値のところに注意を払われることをおススメいたします。

少し長くなりましたので、続きは次回に(^^)
一般的なレンジフードも含めてデザインの種類や選び方などについてお話させていただきます。


追記 2017年9月12日
本ブログ記事は第3種換気(機械排気+自然吸気)を前提にして書いております。第1種換気(機械排気+機械吸気)の住宅の場合には、当記事は該当いたしません。


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株式会社 リーフ 代表取締役 猪倉 厚
1級建築士・宅建士・インテリアコーディネーター
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株式会社リーフ
(シャルドネ大阪南港・アールプラスハウス大阪南港)
1級建築士事務所 大阪府知事(ロ)第22510号
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