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谷口吉郎と谷口吉生②
前回の続きです。今回は、谷口吉生の父親、谷口吉郎に関してのお話。
著作家としての谷口吉郎
建築家には名文家が多い。
特に、戦中戦後活躍された建築家の文章を読んでいると、そこで描かれている情景が空気のにおいまで感じられる程。
谷口吉郎の雪あかり日記・せせらぎ日記もそんな著作だ。
この本には著者が在独日本大使館の建設に係るために第2次世界大戦勃発直前のベルリンに滞在していた時の話がメイン。
世界が大戦へひたひたと近づいていく時代の様子も良くうかがえるのが興味深い。
もちろん、建築に関する様々な論評もちりばめられていて、気候風土の違いからくるゴシック建築やギリシアの神殿建築の考察も行われている。
このブログを書くためにkindleで購入して久しぶりに読み返してみた。
電子書籍というのは便利。建築に興味のある人には是非一読をお勧めしたい良書だ。
(ちなみに、私が学生時代に「建築文化」などによく載っていた建築家の文章はわけのわからないカタカナが飛び交ってて、ちんぷんかんぷんだった。新聞の批評欄にあるコラムニストが建築家の悪文のひどさをあげつらっていたほどだ。あのブームはいったい何だったんだろう)
谷口吉郎と記念碑
東宮御所や慶應義塾幼稚舎の設計者として知られる谷口吉郎だが、記念館や記念碑、文学碑や歌碑と言った作品も多い。
至ってシンプルでミニマムだが、だからこそ、彼のいう「意匠心」がよく現れているようで面白い。
沢山の記念館、文学碑が残されているが、実際に自分で見に行ったものの中からご紹介。
馬籠にある藤村記念堂。(写真はこちらから。記念堂の魅力について詳しく書かれている。)
戦争が終わってわずか2年後、物資もなにもない時代に、村の人々の力によって建てられた島崎藤村の記念堂。
実は建築を含むすべての谷口吉郎の作品の中で一番私が好きなのがこの作品だ。
空間の流れというか連続性がうまく造られている。
止めて、受けて、流す
透かして、通して、渡す
水の流れを設計しているみたいだ。
使われている素材も地元で入手できるものばかりで村人が自力で作れるように、むつかしい納まりもない。ただ、空間の構成で自分のやりたいことをかなえている。
小品だけど建築好きのかたには是非お勧めの作品。
北九州市の高塔山にある火野葦平の文学碑。
高塔山と言えばシーナアンドロケッツやデビュー間もない頃の椎名林檎が野外ライブを良くしていたところ。
そんな公園の一角にこの文学碑は立っている。
金沢市の崔川のほとりにある室生犀星の文学碑。
人型の立像がなんとなくユーモラスな形をしていて面白い。
明治村の生みの親
また、谷口吉郎は自身の作品だけでなく、明治期のいわゆる「近代建築」と呼ばれる建物の保存にも尽力した。
愛知県犬山市にある明治村は彼の発案によるものだ。
今でこそ、古くからの石造り、レンガ造りの建物は文化財的価値が見いだされて、構造を補強し、内装をリニューアルして再利用されているところが多い。
神戸の海岸通りなどもそんな街並みだ。
しかしそのような動きになってきたのはほんの30年前までの事。高度経済成長時代には跡形もなく壊されて無機質な表情の「ビルディング」が次々と建てられていった。
建築における風土性を意識していた谷口吉郎だからこそ、海外から取り入れた構造デザインを日本風にアレンジして建てられた多くの「近代建築」の価値について分かっていたのだとおもう。
彼のおかげで私たちは今でもフランクロイドライトの帝国ホテルを見ることができる。
この項、続く、、かも・
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株式会社 リーフ 代表取締役 猪倉 厚
1級建築士・宅建士・インテリアコーディネーター
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株式会社リーフ(シャルドネ大阪南港)
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