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天然木オイル仕上にこだわる2



 
前回の続き。
さて、天然木オイル仕上推しの記事を前回は書いていたのだが、もちろん、現在使われているウレタン塗装や接着剤はかなり改良されていて体に有害な物質はあまり使われないようになっている。
しかし、工場に行くと、ウレタン塗装工程の塗装職人はカラスマスクを付けて誤って塗料を吸引しないように作業しているのに比べ、オイル仕上工程の職人はノーマスクだ。必要がないからである。
またウレタン塗装工程の場合日本の工場は労働基準法でかなり厳重に身体検査などの基準が決められ職人の健康が守られているが、海外工場で作業されている場合はどうなのかも気がかりだ。
そういう、健康への不安がないということだけでなく、木の本来の魅力を引き出すオイル仕上はぜひとも多くの方に使っていただきたい家具なのだ。
ただ、むやみに、木の癖を知らずに家具にするとえらい目に合う。そこはいろいろな知恵が必要なのだ。その知恵にはどのようなものがあるのかを順番にお話ししていく。
 

反り止め

少し前まで、木のダイニングテーブルのデザインは「幕板」付きのものがほとんどだった。
幕板には木の反りを止めるという機能や、脚や引出の取付部になるという機能がある。
 

 
最近はできるだけ木の重みを出さずにシンプルにデザインしようと幕板無しのものが多くなってきた。
 

 
こうなると、幕板付きのデザインにあった「反り止め」の機能が無くなってしまう。
そのままで作るとほとんどの確率で反ってくる。そこで考えられたのが反り止めである。
 

 

 
こういう工夫をすることで、オイル仕上のダイニングテーブルでも反りを抑えることができる。
 

扉の作り方

次に扉材などのある程度大きな面積が要求される板の作り方。
最近は集成材の技術も発達してきたので、大きな板を撮ることが可能になってきたが、昔はそういう技術はなかった。
そこで、扉や戸を造るときは4方を框(かまち)と呼ぶ枠でまず囲い、中に鏡板と呼ばれる板を入れるようにして大きな面積を作るようにした。
鏡板も一枚一枚、動くように造られているのでもし湿気や乾燥で膨張、収縮しても継ぎ目のスキマが大小動くだけで扉全体は大きく寸法が変わらない。
もともと、下の写真のようなデザインの扉は木の性格をきちんと把握したうえで、理にかなったデザインなのだ。
 

 
ただ、上のようなデザインだとどうしてもカントリーっぽくなってしまうのでストレートなデザインも造りたい。
その時には先ほどのテーブルのように扉の裏に反り止めを取付ける。
このような配慮をすることでオイル仕上の天然木でも扉材に使うことができる。

 

テレビボードの天板

下の写真は当店のオリジナルデザインのテレビボード。
フルオーダーでサイズも自在に変えれる。
いい色つやの出ているウォールナットの天板はもちろんオイル仕上だ。
ここにも実は造るときの工夫が隠れている。
 

 
このテレビボードの天板の裏側にも、先ほどのダイニングテーブルの裏側にあったような金属製の反り止めを仕込んでいる。
ただ、反り止めを入れていても若干のそりが出てくる時もあるし、収縮で位置がずれてくる時もある。
その時のために、天板を何かあれば取り外しできるように造っている。
 

 
ローコストで販売されているテレビボードの中には、上の写真の「本体部分の天板」に当たる部分がなく、直接本体に接着止めなどされている場合が多い。
その場合は万が一、反ってきてしまったときには調整などの対応は不可能になってしまう。
 
 

天板の「ちり」

「ちり」というのは建築現場でもよく使われる言葉。ある面から少しの寸法ででぱっている状態を示す。
家具の場合、大切なのはキャビネット類などを設計するときの本体と天板部分とのちりだ。
天板を天然木のオイル仕上で作る場合、当然、乾燥による収縮を見こさないといけないので少し余裕をもってちり寸法を設定する必要がある。
 

 
下の写真はちりが少なすぎたために天板の乾燥で側板の小口が見えてきてしまった例。
すっきりしたデザインを求めるとできるだけちり寸法は押さえたい所だが、やりすぎるとこうなる。

 
 

木目の方向で色が変わる

たまに、お客様から「一部分だけ色が違うんですけど」と言われることがある。
多くは、木目の方向による色の見え方の違いだ。
実は天然の木は、木目の方向によって光の反射が異なるので色の濃さが違って見える。
 
木目が横に通っているよりも縦に通っている方が濃く見えるのだ。
濃く見える縦目の板を横にするとちゃんと薄く見える。
引出や扉を造る場合、基本的には長手方向に木目を流す。
その方が集成材の接ぎ枚数が少なくて済むからだ。
下のキッチンの様に横長の引き出しの前板と、縦長の食洗器の前板とでは木目の流れる方向が違うので色が違って見えるということ。
逆に言えば、方向が違って色に濃淡が出るということが天然目無垢板の証とも言える。
 
 

 

おまけに少し桐の話

オイル仕上の話ではないが少し桐の話もしたいと思う。
昔から日本の家具に使われてきた桐材。
軽くて吸湿性があり加工もしやすい。昔は呉服など湿気を嫌うものの収納として重宝されてきたし、重要書類を収納する金庫の内箱などには今でも使われている。
最近はウォークインクローゼットが増えてきたが湿気の黄ばみを防ぐためにも大切なセーターやシャツなどはできれば桐の箱に収納したい。
当店では表面(前板)にオイル仕上の天然木を使っているが内部は桐の箱にしている家具が多い。
まず、桐でいったん箱を作り、その前面に目に触れる前板を取付ける。
こうすることで外観のデザインは自由にしながら内部の機能(調湿性)はしっかりと保つことができる。

 
引出を抜いて裏側を見ると、さらにいろいろな工夫がみられる。
木釘を使うことで長年の仕様で底板がすり減ってきたときも金属製の釘の様に内部を傷つけない。
錆びることもない。
また、接合部には蟻組み(ありぐみ)といった昔からの手法でしっかりを組まれている。
外から見ると今風のデザインでも内部にはしっかりと昔からの日本の家具作りの技法を使用している。
 

 
さて、家具における天然木オイル仕上の使われ方をお話してきたが、実は建築の部材でも同じような工夫がされている。
その話はまた続きに。
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株式会社 リーフ 代表取締役 猪倉 厚
1級建築士・宅建士・インテリアコーディネーター
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株式会社リーフ(シャルドネ大阪南港)
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