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安藤忠雄展「挑戦」に行ってきました。



 
「家具から始める家づくり」リーフの猪倉です。
2泊3日の東京研修。
今日の午前中は研修の合間を縫って、新国立美術館で開催中の建築家安藤忠雄さんの展示会「挑戦」を見に行ってきました。
私が安藤さんの建築に初めて出会ったのは、神戸で建築を学ぶ学生になった当初に、当時の建築学会賞を受賞した「住吉の長屋」を建築雑誌で見た時です。
 

 
ちなみに、展示会の会場を入るとすぐ、この「住吉の長屋」のエントランスをシンボライズしたと思われる開口部がありました。分かる人にはわかるメタファがちりばめられているのがこの展示会の面白いところでもあります。ちなみに、私はそこをくぐって、学芸員の方から怒られましたが(^^;
 

安藤さんと神戸北野町

ポートピア(神戸博)前後の神戸。NHKドラマの「風見鶏」で脚光を浴びてきた北野町の異人館街で安藤さんが数々の商業施設を手掛けられていた頃、私が神戸で建築学生時代を過ごしていた時期と重なっていたのでした。
 

 
レンガタイルの外壁が印象的な「ローズガーデン」(1977年竣工)や
 

 
同じような外観ながら、内部に入るととても清冽な空間構成が印象的だった「リンズギャラリー」(1981年竣工)
ちなみに村上春樹が「風の歌を聴け」で群像新人文学賞をとったのが1979年。ジェイズバーを探していた時期と安藤さんの北野町時代はまさに被さるのでした。
1983年頃だったと思うのですが、安藤作品が北野町に集積してきたころに、展示会が開催され、それに向かうべく、三ノ宮駅から北野坂を登っていた時に、信号待ちで隣に安藤さんがいらしたのも昨日のことのように思い出してしまいます。
いつも、週末になると徘徊していた北野町に存在する安藤さんの建築はとても身近だったけれど、不思議な「風土性」もまた感じることがありました。
それは、「陰影」であったりとか「余白」であったりとか、どちらかと言えば日本の伝統的な建築や絵画、書に至るまでの芸術に見られる感性。
また、コンクリート打ち放しからは素材そのもののの風合いをいつくしむ姿勢も見受けられました。
建築学生として神戸の大学に入学した当初からガウディの建築に衝撃を受け、「建築における風土性」に興味があった自分は、一見、日本の伝統と真逆の位置にいる安藤建築の中にも、日本の風土性が見られると思い、大学院の修士論文にしようと思いました。
しかし、当時の指導教官からは「存命中の建築家の評論はしない方が良い」との指導を受け、谷口吉郎さんの建築作品にテーマを変えていたことを思い出します。
 

圧巻だった「挑戦」展

前置きが長くなりました。
思い入れのある話はついつい長くなります(^^;
今回の展示会が開催されたのは乃木坂にある新国立美術館。
初めての訪問だったのですが、美術館自体も建築として、とっても見ごたえがありました。
 

 
ファサードを覆うガラスのルーバーにはシルクスクリーンの模様が入っており、太陽光の輻射熱をさえぎってくれる機能も持たせていますが、デザイン的にもすごく効いていて、直線的なルーバーの連続が曲面を構成する様は日本の技術力の高さを改めて感じます。
 

 
館内は平日の午前中にもかかわらず、大変多くの人でにぎわっていました。
有料の音声ガイドがあったのですが、これはおススメです。
要所要所で安藤さん自身の語る、作品に対する想いを聞くことができます。
館内は基本、撮影禁止なのですが、唯一2か所だけ撮影可能な場所があります。
 

ようやく完成した「光の教会」

 

 
元々の計画では、この教会は天井も無し、十字架の開口部もガラス無しという計画だったということです。
天井の方は、地元の建設会社の方が寄付を申し出られ、十字の開口部は教会側からの申し入れでやむなくガラスを入れたということでした。
今回の展示会では実物大の「光の教会」が再現され、十字の開口部や側面のスリットにもガラスはなく、本来、安藤さんが意図した空間が体験できる、とっても貴重な場所になっています。
話は少しそれますが、天井の建設費を地元の建設業者の方の寄付によりできたというお話を聞いて、谷口吉郎さんが設計した木曽路馬籠の「藤村記念堂」のエピソードも思い出しました。
戦後間もない、物資も欠乏している頃に設計された記念堂は地元の有志の方の物心両面の協力により出来上がったということです。
建築は本来、作り手の、その完成に向けての想いを持つ人の情熱によって実現されるもの。最近のリノベ、DIYのトレンドと通ずるところもあるのかなと思います。
 

 
教会の後ろに置かれていたマッキントッシュを彷彿させるハイバックチェアが2脚。
 

 
外に出て、背後に回り込むと十字の開口部がとても印象的です。
 

直島プロジェクト

もうひとつ、撮影可能だったのが、香川県の直島プロジェクトのインスタレーション。
かって、産廃で汚されてしまった島を再生させようとする試みが島を変え、住む人を変え、島自体の存在価値も変わっていった様を、見ることができます。
 

 
インスタレーションの中には建築模型も精巧な精度で作られていました。
 

 
正直言って、見るまではそんなに期待をしていなかったのですが、大きく裏切られました。
1時間半ぐらいの滞在だったのですが、一日いても安藤ファンならば飽きることはないでしょう。
何よりも、自分の心の残った言葉がたくさんありました。
「建築は作って終わりではない。生み出してから後、育てるもんです。」
「障害があったから、それを乗り越えるように、戦ってきたんです。人生は短い。同じ人生なら、自分が好きなように生きてやろうと。」
常に走り続け、常に挑戦し続ける安藤さん。
その後ろ姿を見て、色々な思いがよぎります。
「自分は何の為に生きているのか。」
「自分が本当にやりたいことは何なのか。」
「そのことは世の為、人のためになるのか。」
もちろん、綺麗ごとだけでは物事進まないのかもしれません。
それでも、自分が実現したい夢を持ち、それを飽くことなく熱意をもって伝え続ければ夢はかなうことを安藤さんは教えてくれていると思います。
安藤さんの著作はいろいろありますが、一番私が好きなのがこちら。
どれだけ素晴らしい仕事をしても(と自分は思っている)、仕事が来なければ何もできません。
その時に、安藤さんはどう動いたか。
是非、読んでいただきたいおススメの書です。
 

 
76歳にしてもなお
「やらなあかんことがまだまだあるから死なれへん。」
とおっしゃる安藤さん。
常に挑戦し続ける姿は初めてお会いした35年前から少しも変わっていません。
自分も、あらためて使命感を持って自分が本当にやってみたいことをやり通そう、そう思った今回の展示会でした。
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*:..。o○ 家具から始める家づくり ○o。..:*
株式会社 リーフ 代表取締役 猪倉 厚
1級建築士・宅建士・インテリアコーディネーター
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株式会社リーフ
(シャルドネ大阪南港・アールプラスハウス大阪南港)
1級建築士事務所 大阪府知事(ロ)第22510号
宅地建物取引業  大阪府知事(1)第56790号
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